世界の車窓からDVDブック感想レビューのページ > フランス1
世界の車窓からDVDブック
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どこまでも続く紺碧海岸に酔う アルプスローカル線
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●フランスの車窓 常に世界最速のスピード記録を叩き出してきた鉄道王国フランス。2007年には578.4km/hというリニアモータカーを凌ぐ速度を樹立しました。世界の車窓からDVDブック フランス1編では、TGVには乗車しませんが、フランス南部・地中海のコートダジュール(紺碧海岸)と、そこから少し内陸へ入った風光明媚なローカル線を訪ねます。いずれも、ゆっくりと眺めたい車窓です。 【フランス共和国】(共和制) 面積:55万k2m(日本の約1. 5倍) 人口:6074万人(日本の約半分) 人口密度:114人/k2m(高知県とほぼ同じ) 言語:フランス語 鉄道開業:1828年(日本の44年前) 長さ2万9千km(JRの約1. 2倍) |
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【世界の車窓からDVDブック フランス1】 発売:2007.12.5 定価:1470円 DVD:61分+17分(特典) 撮影:2001年8月、2002年9月 |
沿線の歴史的な町並み、コートダジュール(紺碧海岸)と呼ばれる深みのある濃い青色をした海岸、ラグーンの広大な湿原、イタリア国境のアルプスへ向かう列車・・・と、車窓だけでも充分に美しめるのにも関わらず、ダイナミックな空撮シーンを度々挿入し、「世界の車窓から」でしか味わえない視点を多く入れている点に感服。空撮シーンの多さはシリーズ最多かもしれません。また、地上カメラからの列車走行シーンも多く、センスの良いものです。
ただし、フランスご自慢の新幹線「TGV」には乗車せず、あえて地元の人が利用する普通列車メーンで移動しています。「世界の車窓からDVDブック フランス1」に登場する在来線は、窓を開ける事が出来る比較的古いデザインの列車ばかりで、いかにもヨーロッパの列車という感じが楽しめます。終着駅で機関車を付け替える手間を省く為に、ヨーロッパで多く行われているプッシュ・プル運転(反対方向の列車の場合、機関車が客車を押す)の列車が出てこないのも、列車が美しく見えるポイントです。そして「TGV」とは真逆の、ローカル線の可愛いレールバスや、100年近く現役で動いている軽便列車のSLなど、見どころが多彩です。
付録の特典映像「『世界の車窓から』北欧撮影リポート」は、『世界の車窓から』の撮影の裏舞台が良く分かり、興味深いものです。
章 | 時間 | 乗車区間 | 映像の特徴 |
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1 |
タルゴ特急の旅 |
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7:30 | マルセイユ | 独創的で天才的な建築家ガウディの建築群・・・サグラダ・ファミリア、グエル邸、光の館、カーサ・ミラなどを訪ねる。 | |
バルセロナ・サンツ | 旅はスペイン第2の都市バルセロナからスタート。フランス・モンペリエ方面行きの「タルゴ」に乗車。 | ||
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タルゴとは、カーブでもスピードを落とさずに走行できるように開発された車体の短い列車。小田急線のロマンスカーと同じ発想の列車である。車体はJRの電車の1/2〜1/3程度の長さしかない。 ポールボウは国境の駅。ここでスペインの乗務員から、フランスの乗務員へ交代。このタルゴという列車には、もう1つ大きな特徴がある。スペインとフランスでは、鉄道の線路幅が異なる。タルゴは、異なる線路幅へ直通できる「フリーゲージ・トレイン」なのだが、ここポールボウ駅で走行中に線路幅を変える様子は残念ながら収録されていない。 ![]() |
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モンペリエ![]() |
人口20万の市民の足として活躍している青い路面電車と、市民の憩いの場―18世紀に作られた集水場の跡を利用したプロムナード・デュ・ペルー公園を紹介。市民は気持ちよさそうな顔。 | ||
2 |
ローカル線で史跡探訪 |
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15:00 | モンペリエ・ベジエ ↓ ![]() |
モンペリエは、内陸を縦断しパリ方面へ行く路線と、地中海沿いに進む路線の分起点。 地中海沿いに走るアビニョン行きの普通列車に乗車。 ![]() トー湖が車窓に寄り添うと、セートはもうすぐ。セート駅に滑り込む列車と、セート駅を空撮。 |
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セート | 北部アフリカとの貿易で古くから栄えた町。 17世紀から続く夏の伝統スポーツ「ジュート」の模様を紹介。 運河に浮かべた2艇の船の舳先に男が立ち、相手をやりで突いて水面へ落とすという、言わば水上騎馬戦。観客は楽器を鳴らして盛り上がる。 |
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![]() 列車は南フランス・プロバンス地方へと入る。 |
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ニーム | フランス最古のローマ都市。紀元前1世紀に作られ、今なおその姿をほぼ正確にとどめるローマ神殿のメゾン・カレをはじめとして、街中に遺跡がいっぱい。紀元1〜2世紀にかけて作られた円形闘技場は、イベント会場として今でも使われている。 ニームから20km離れた場所にあるローマ時代のアーチ型水道橋、ポン・デュ・ガールも紹介。50km離れたニームまで1kmあたり34cmの傾斜をつけて水を流した高度な土木技術。今はもう水は流れていない。 |
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ニームの旧市街、ローム川などの車窓。 | ||
アヴィニョン | ローム川沿岸の町。かつてカトリック正教会の総本山・ローマ政庁が置かれていた町。その当時の荘厳で堅牢な建物が今でも残る。フレスコ画も鮮やかに残っている。17世紀の洪水によって半分が失われたサン・ベネゼ橋は今でも美しい。 | ||
3 |
地中海からアルプスへ |
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10:00 | ゴルド | 車窓のルートから外れるが、中世の美しい山岳都市を紹介。文明と自然が一体となった町。 | |
ミラマ ↓ ![]() ↓ |
日本の少し古い通勤電車のようにも見えるステンレス製の客車を機関車が引っ張る。百数十km/h以上で走っているのに窓が開くのが凄い。 ミラマという小さな駅で乗換。 海が見えてくると、マルセイユはもうすぐ。 |
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マルセイユ | 古い港町。紺碧の海岸が広がる。漁港の一角、魚の路上販売を覗く。マルセイユの市民は、市場ではなく、露店で魚を買う。 | ||
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![]() アルプス山脈へ向かう列車を空撮。客車3両に対して、機関車が2両もついている。 列車の両脇に少しずつ山が迫ってくる。空の青。大地の黄土色、山の濃緑。開け放たれた窓から入ってくる風が気持ちよさそう。 紺碧のセルポンソン湖――ヨーロッパ最大の人造湖を渡る。 |
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ブリアンソン | 標高1321m。イタリアと国境を接するアルプス山ろくの町。ホームの終端には大きな山岳がそびえる。アルプスといっても、スイスとは違って、風景や空気が爽やかに乾いて見える。そこもフランスの魅力である。 | ||
4 |
コート・ダジュール |
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9:00 | マルセイユ・サンシャルル ↓ ![]() |
![]() サン・ラフェルを過ぎると列車はコート・ダジュール(紺碧海岸)に沿って走る。この海岸にコート・ダジュールという名前が付いたのは、元々はそういうタイトルの小説が書かれたからなのだが、今では地図にも地名として載っている。前半は超・高空からの空撮でコート・ダジュールを走る列車を追う。パンテオールの大きなアーチ型の鉄道橋も高空からダイナミックに捉える。太陽に輝くコート・ダジュールの車窓が美しい。 コート・ダジュールの海岸に迫る赤い岩山――レステレル山海も、カメラをうんと引いた空撮で列車と併走する。山の赤と、海の紺碧のコントラストが絶妙。ここでTGVを2本つなげた特急とすれ違う。 |
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カンヌ | 19世紀から、イギリス貴族の避寒地として発展してきた国際的な観光都市。「海岸には高級ホテルのプライベートビーチが続きます」とナレーションが入るが、海岸にはパラソルがびっしり並んでいて「夏休みのイモ洗い市営プール状態」。リーズナブルなプランの客のためのビーチなのだろうか? | ||
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カンヌを過ぎても空撮は続く。町並みの海岸線を走る列車を、列車が丸ごと見渡せる高空から空撮。そして、ここでもTGVとすれ違う。TGVは紹介しないから、あえてこのシーンを使っているのか。 | ||
ニース | 17世紀までイタリア領だった町。したがって、庶民の暮らしにはイタリアの文化の影響が強く見られる。 | ||
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モナコ | モナコ公国の駅。フランス保護下の小さな国。グランカジノに国家財政を依存している。コートダジュールを代表する贅沢な歓楽リゾート。 | ||
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もうすぐコートダジュールの車窓ともお別れである。 | ||
マントン | イタリアと国境を接する町。かつては農業が主な産業だったが、結核の療養地として注目され、リゾートとしても発展。 | ||
5 |
プロヴァンス鉄道 |
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ニース ↓ |
プロヴァンス鉄道は非電化のローカル線で、青と白のツートンカラーのレールバスが活躍。小柄な車体に似つかず、路線の長さは160km以上もある。しかしニースから3時間ほどで終点まで走破するのだから、ローカル線にしては速い。 ニースの郊外に出ると沢山の無人駅に停車。乗客は車掌から切符を購入するのは日本でもおなじみの風景。車内が満席なのは、ローカル線としては頼もしい。 ![]() 軍事目的で建設されたこの路線は、線路が深い谷底に敷かれている。見上げば、くらむような崖が車窓にそびえる。 |
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アントゥルボー | ![]() |
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↓ | 川沿いに進むレールバス。山や土の色が違うが、日本のローカル線と雰囲気が良く似ている。それもそのはず、レールの幅が1000mmと、日本の在来線とほぼ同じ。![]() レジャーのキャンプ村が見えてくると、もうすぐ終点。車内が満席だったのは、このリゾートへ向かう乗客たちだった。 |
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ディーニュ | 赤茶けた屋根が多い、のどかな山間の盆地。 | ||
6 |
日曜限定の蒸気機関車 |
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9:00 | ピジェ・テニエ ↓ ↓ ↓ アノー |
前述のプロバンス鉄道では夏の間だけSLが走る。SLの運行に携わるのは、各地から集まった鉄道ファンを中心とするボランティア・スタッフ。 列車を引っ張るのは1909年のフランス製のSL。外観が日本の明治時代の機関車に似ている。オープンデッキ式の褐色の客車を数両引っ張る。同じ路線のはずなのに、前章で乗ったディーゼルカーに比べて車体幅が狭く、軽便鉄道のように見える。 列車は22.4kmを1時間40分もかけて走る。この列車は「まつぼっくり列車」と言われ、車窓から手を伸ばせば森のマツボックリが取れる、というくらいスピードが遅い。子供達は窓から手を出して、まつぼっくり取りにチャレンジ。 ![]() ギシギシ、カシャカシャと、列車は山の中を走る。甲高い汽笛が山間にこだまする。 列車の通過待ちで、アントゥルボー駅で20分停車。単線だから、反対方向の行き違い…と思いきや、ディーゼルカーが追い抜いていった。乗客はSLの前で記念撮影。 勾配が急な区間を走るSLの機関室は、のどかな走行風景とは打って変わって戦場。子供達の夢を絶やさないように、機関士は一生懸命。 終着駅アノーに到着。今日は小さな村の夏祭り。地元の人たちが乗客をプロバンスの伝統的な踊りで歓迎してくれた。 |
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特典映像 |
「世界の車窓から」北欧撮影リポート
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17:00 | 世界の車窓から DVDブック スウェーデン/ノルウェー編 のメイキング |
単に極寒の地で「低温でカメラのバッテリーがすぐ切れるから、カメラにカイロを巻いてしのぐ」「車のドアが凍って開かない」と苦闘する様子を伝えるのではなく、「世界の車窓から」がどうやって撮影されているのかが分かる。
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