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世界の車窓からDVDブック

アメリカ 大陸横断アムトラックの旅

これぞ「大陸横断」特急の旅 良い編集!
アメリカ鉄道旅行を満喫できる「買い!」な「アメリカ」編

アメリカの車窓
世界第3位の国土面積を有するアメリカの車窓は、平原も山岳も、とにかく雄大。この広大なアメリカに敷かれた鉄道網は実に22万5500kmと世界最大。しかし、航空機や高速道路の発達で旅客鉄道は衰退。この哀愁感もある意味たまらない(貨物輸送は好調なので線路は健在)。世界の車窓からDVDブック アメリカ編の目玉はシカゴ〜サンフランシスコの大陸横断列車。編集が秀逸で存分にアメリカ大陸横断列車の旅を楽しめる。
【アメリカ合衆国】(連邦共和制)
面積:927万k2m(日本の約25倍)
人口:3億人(日本の約2倍)
人口密度:31人/k2m(北海道の半分以下)
言語:主に英語(他民族国家)
鉄道開業:1830年(日本の42年前)
長さ22万5千km(JRの約10倍)
※最盛期は約40万km!(地球10周分!)

世界の車窓からDVDブック アメリカ 世界の車窓からDVDブック アメリカ
発売:2008.1.4
定価:1470円
DVD:72分
撮影:2006年9〜10月

「大陸横断アムトラックの旅」というサブタイトルどおり、ミシガン湖畔のシカゴから、太平洋沿岸のサンフランシスコまで、3900kmを2泊3日・約50時間を掛けてアメリカ大陸を横断する「カリフォルニア・ゼファー号」の旅がメインとなります。さらに最終章では、アメリカ西部の開拓時代風のSL、世界一高いつり橋の下を通る2つの観光列車、そして世界でも有数の標高(4000m超!)を走る登山鉄道を旅します。
シカゴはアメリカ中西部に位置するので、「大陸横断ではない」と思われるかもしれませんが、むしろこの長さだからこそ、良い映像になったように思います(収録区間が長くなると、どうしてもハショリが多くなるので)。
アメリカというと、日本には無いスケールの大きい車窓が見られる一方で、車窓が単調という先入観もありますが、この『世界の車窓からDVDブック 大陸横断アムトラックの旅』では、映像の選び方や、カメラワークが凝っており、全く退屈せずに、臨場感たっぷりに、アメリカ大陸横断列車の旅を満喫することができます(カナダ編やオーストラリア編よりも良いと思います)。特にコロラド川沿いの谷を疾走する列車をダイナミックな空撮で迫ったシーンは圧巻です。空撮の視点は、実際の鉄道旅行では味わえないため、まさに「世界の車窓から」の醍醐味と言えるでしょう。列車の外観走行シーンや、窓からカメラを出して、前方や後方へ向けたシーンが比較的多く、鉄道ファンも楽しめると思います。
アメリカの鉄道車窓=退屈という先入観を捨てて、見てみるべき巻でしょう。
テレビ放送:2006年11月〜2007年2月。

世界の車窓からDVDブック アメリカ 大陸横断アムトラックの旅
時間 乗車区間 映像の特徴
1

カリフォルニアゼファー号1 …広大な穀倉地帯、アメリカ中西部の車窓

14:30 シカゴ・ユニオン アメリカ第3の都市で、多くの鉄道路線が集まるためにアメリカの「鉄道首都」として栄えてきた町。「摩天楼発祥の地」と言われ、110階建てのシアーズタワーや、ユニークな形をした高層ビルが林立し、観光客は上を向いてカメラのシャッターを切る。ジャズのBGMがいかにもアメリカらしくて良い雰囲気。


アメリカでは長距離の鉄道旅客は採算にのらないないため、半官半民のアムトラック(全米旅客公社)が貨物鉄道の線路を借りて列車を走らせ、全米に鉄道でアクセスできるようにしている。(かたや日本の場合は、JR旅客 6 社(JR東日本、東海など)の線路を借りてJR貨物が貨物列車を走らせているので、日本とアメリカの鉄道は、全く逆の関係にある)。
そのアムトラックのサンフランシスコ行き特急「カリフォルニア・ゼファー」号。ゼファーとは西風という意味。2階建ての客車「スーパーライナー」およそ10両編成を、2両の最新型のディーゼル機関車「ジェネシス」が引っ張る。大きな車体を揺らして、シカゴを後にする。高層ビル群を背に、ゆっくりとシカゴ駅を後にするゼファー号が印象的。スピードを上げて人口1千万人のシカゴ近郊の駅を通過していく。
郊外を抜けると、ゼファー号は一面の大豆・トウモロコシ畑の中を走る。
車内では中むつまじい熟年カップルを多く見かける。彼らはゼファー号でのトレイン・クルージングを楽しんでいる。
ミシシッピ川では、橋の一部が回転して船を通す可動橋をゼファー号は渡る。橋の回転の様子も収録。アメリカ人にとってミシシッピ川は様々な物語に登場するアイデンティティの川。皆車窓に釘づけになる。
夕暮れのバーリントンを抜けると食堂車ではディナータイム。食事が終わる頃にはゼファー号は夕暮れに向かって走る。
寝台のセッティング作業、最上級コンパートメントの紹介。
コロラド州に入ると夜明け。ゼファー号は再び平原を走る。
カリフォルニア・ゼファー号は、銀色の車体だから、朝と夜は、夕日や朝日が映えて、非常に美しい。
デンバー・ユニオン ゼファー号の給油、清掃。夜間に白いミミズクが機関車と衝突し、連結器の上に引っかかっていた。「よくある事だよ」と機関士。
2

カリフォルニアゼファー号2 …26のトンネル、うねる線路、ロッキー山脈の車窓

17:00  

デンバーから乗ってきた、おそろいの服を着た30人くらいの子ども達。学校のキャンプ? と思いきや、みな1つの家族なのだ。体格の良いおばさんがこの子たちの母親。世界中から孤児を引き取って、養子にしているのだそう。このおばさん自身もかつて孤児だったという。「肌の色は違っても、皆兄弟です」というナレーションが泣ける。ただ、旅行予算の関係か、全員寝台ではなく「座席車」利用である。
世界の車窓からDVDブック アメリカの見どころゼファー号はロッキー山脈の峠に入る前に、「ビックテンカーブ」という雄大なカーブを通る。勾配を緩和するために、線路はあえて遠回りにカーブしている。日本で言えば、北海道のJR根室本線の新得駅付近と似ている風景かもしれない。カメラは「ビックテンカーブ」を山上からの俯瞰でダイナミックに捉える。BGMはピアノで穏やかな旋律でよく合う。
信号所で機関車を複数繋いだ長大な貨物列車とすれ違う。貨物列車が登場するのはこのシーンだけ。
ゼファー号はロッキー山脈の峠に入る。ゼファー号はカーブを繰り返し、いくつものトンネルに入り、高度を上げていく。トンネルを抜けると雄大な景色が眼下に広がり、女性達が「ワオ!」と歓声を上げる。ゼファー号の行く手には白い山並みがそびえる。
全長10kmのもファットトンネルを抜けると、ゼファー号はゴア・キャニオンの峡谷に沿って蛇行する。車輪とレールが摩擦し、キーキー唸る。
食堂車では二度目の昼食を迎える。ふくよかなオバサンがハンバーガーを頬張る。お皿の付け合せは野菜ではなくポテトチップス。そりゃ太ります・・・。
グレンウッド・スプリングス 有名な温泉の町。ホットスプリングスは世界一大きな温水プール。老若男女がくつろぐ。男の子が飛び込み台からダイブする一方、カウボーイ・ハットのおじさんが目を細めて温泉を満喫している。温泉は人類共通の癒しなのだ。
歴代大統領が宿泊した名門「ホテル・コロラド」も紹介。


おばあさん達は、美しい景色に目もくれず、ひたすらサイコロを転がし、ギャンブルの練習中。ニューヨークから毎年、ゼファー号の沿線のリノまでギャンブルを楽しみにいくそう。ギャンブルの練習? 意味があるのか・・・? ギャンブルに少しでもお金を回すためゼファー号で行くのか・・・。
世界の車窓からDVDブック アメリカの見どころデベックキャニオンを走るゼファー号をヘリコプターで待ち伏せ、併走、追尾したりで、大胆に空撮。壮大なハリウッド風シンフォニーのBGMが盛り上げ、この巻の最大の見所と言えそう。編集後記によれば、カメラマンは生きた心地がしなかったそう。パイロットからは「少しくらい怖い思いをしなければ良い仕事はできない」と言われたそう。
グランド・ジャンクション 太古の昔は熱帯であったため、恐竜の骨がたくさん発見される町。この町の観光名所は「恐竜博物館」。肉食獣が草食獣の首を引きちぎって、ブンブン振り回す展示に子どもが大泣き。このブラック・ユーモアさがアメリカらしい。

カリフォルニアゼファー号3 …荒涼としたアメリカ西部の車窓

8:30

世界の車窓からDVDブック アメリカの見どころ夕日に染まるルビー・キャニオンを走るゼファー号を、これまた大胆に空撮。ゼファー号の先頭に回り込んだり、高速で先回りしながら高度を変更したり、パイロットの操縦が凄い。ステンレス製のゼファー号に夕日が輝いて美しい。アコースティックギターのBGMもマッチしている。
アーチーズ国立公園は全体的に赤土色で、ありの巣ような奇岩が林立する、地球とは思えない光景。メガネのような2つのアーチ岩から、アーチーズと名づけられたのか。
2日目の夜が明けるとゼファー号はユタ州の乾いた荒地を走る。
トラッキー川が車窓に寄り添えば、リノまで30分。
リノ アメリカで3番目に大きなカジノの町。サーカス風のBGMに合わせて、カジノの中と、カジノ街を紹介。アーチのネオンサイン「世界一大きな小都市」というフレーズがユーモラス。

カリフォルニアゼファー号4 …初秋の太平洋沿岸地域の車窓

11:00

トラッキー川の峡谷に沿って進む。
トラッキー駅近くの自然名所タホ湖も紹介。世界でもトップクラスの透明な湖。
シエラネバダ山脈の峠道にさしかかるゼファー号の車窓からは、ドナーレイクが見下ろせる。
定刻より4時間近く遅れているゼファー号。食堂車では、そのお詫びとして乗客に、シチューとティーが無料で振舞われた。
エマリービル サンフランシスコ市内にアムトラックの駅が無いため、乗客はアムトラックのロゴが入った専用バスでシスコ市内へ向かう。
サンフランシスコ アルカトラズ島、ロンバード・ストリート(いろは坂の極小・街中版? 下り専用)を紹介。
そして「世界の車窓から」で外せないのがサンフランシスのコケーブルカー。かなり詳しく紹介。
ケーブルカー博物館では博物館、ケーブルの巻上げドラムが稼動中。全ての路線のケーブルがそこに集まる景観は圧巻。ケーブルカーの仕組みも紹介。道路の溝に埋まっているケーブルも蓋を開けて紹介。ケーブルカーの操作の模様、床下のケーブルを掴むフックや、後輪の補助ブレーキの動作する模様も紹介。
なお、超有名な観光名所である真っ赤なゴールデンゲートブリッジは登場しない。

コロラドの観光鉄道 …西部劇風のSL、「世界一」の谷底を走る列車、標高4000mを走る登山鉄道

16:00 ジョージタウン・ループ鉄道 アメリカの西部開拓風の機関車が走る元・鉱山鉄道。ロッキー山脈から産出される銀を運んでいた鉄道の1つ。今は観光客を運ぶ。
列車は屋根付きの客車の他に、座席を設けた屋根なしの貨車も連結。ただし、標高2600mという事もあって乗客は寒い思いをする。
この鉄道の見どころは、高さ30mのデビルズゲート・ハイブリッジ。列車は徐行する。この区間はらせん状になっており、列車は橋の下も通る。ループ鉄道という名前の由来は、これであろう。
ロイヤル・ゴージ・ルート鉄道 アーカンソー川の峡谷に沿って走る観光列車。サンタフェ鉄道のこの区間は、短絡ルートの開業により貨物専用線となっていたが、車窓の美しさ、そして「世界一高い橋をくぐる」というシチュエーションから、観光列車が走り始めた。
屋根を切り取った客車を連結し、風を肌で感じながら、美しい風景を満喫できる。列車は、顔が丸い旧型の機関車などを敢えて数台連結しており(短い列車だから1台でも充分なはずだが)、連続するきついカーブでは、その雄姿が後方の客車から眺められ、鉄道ファンにもたまらない鉄道であろう。
切り立った異様に高い崖が両側に迫ってくると、列車は世界一高いつり橋であるロイヤルゴージブリッジの下を通る。水面からの高さは321m。橋が深い峡谷の上に掛かっているため、この高さになる。ほぼ垂直の崖を登るケーブルカー(というかエレベーター?)に乗れば、橋の上へ行く事が出来る。もちろん、橋の上からは、峡谷のくねった線路を小さくなって走るロイヤル・ゴージ・ルート鉄道の列車を見ることが出来る。
パイクスピーク・コグ鉄道 標高4301mのパイクスピーク山。その頂上へ向かう歯車式の登山鉄道。「コグ」は歯車(cog)。歯車式としては、実は世界一の標高を走る。全長14km、所要は1時間15分。ふもと駅との標高差2300mのため、平均164パーミル(1kmで164m登る)という事になる。自転車並の低速だが、人間の登山よりは格段に速い。この登山鉄道は非電化で、スイス製の赤いディーゼルカーが走る。
列車は紅葉の樹木をかすめて登っていく。赤土の山肌が見える区間に入ると、そこら中に巨石が転がっており、今にも線路に崩れてきそうで、とスリリングである。歯車式の線路に雑草が生えているのも、アメリカの登山鉄道らしい。観光地の路線ではなく、ローカル線のようである。
列車は標高3553mの森林限界(木が育たない)を突破し、なおも登る。下界には湖と森が広がる。
山頂が近くなると、列車は赤土の岩だらけの世界に入る。空が近い。明らかに地上とは違う、紺碧の空の色。宇宙にさえ近づいているような感じだ。エンジンの音から、列車ではなく登山バスに乗っているような感覚になる。
列車は山頂駅に到着。文字通り、パイクスピークの山頂である。
世界の車窓からDVDブック アメリカの見どころなんと、終点のレールは崖から突き出している。アメリカ人らしい遊び心だが、万一の事を考えると怖い。山頂駅は富士山よりも500m高い所にある。
30分で列車は折り返す。軽い装備で長時間、山頂に居ると、健康を害するからかもしれない。


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